復旧・復興対策の段階


復旧関連公共事業が始まる前の先行発注

 大規模災害の復旧では、測量・設計・建設関連業者の確保の度合いが進捗を左右する。また、公共事業が優先的に進められる。このため、公共事業が始まる前に専門性が高く競合が予想される業務を効率的に進めておく必要がある。

 解決として、委託業務による指名競争入札の採用がある。委託業務とすれば、個人で複数業務を担当できるため事業の混雑期には有効性が高い。また、指名競争入札とすれば入札業務の削減に繋がる new6/13


農地の被害程度と対策の例

 ※ 被害状況は目視の他、「見えない亀裂」による湛水・代かきの障害がないか、

         湛水試験を行って判断する。


避難中の農家の意思決定は不安定

 避難中の農家の営農継続に対する意思は不安定である。あまり早い時期に意思決定を要請すると、復旧後に営農を行わず結果的に過剰投資となるリスクがある。難しいことであるが、農家の意思決定の安定を見極めた上での復旧方策が求められる。


土地改良事業の経験がない地区を支援する

 土地改良事業の経験が無い地区では、災害復旧時に土地改良区を立ち上げるのは困難であるほか、事業に対する合意形成は難しく、換地の意味の理解にも時間がかかる。こうした地区が取り残されるのを防止するため、県・市町村等は協議して災害復旧事業に関わる業務を支援・代行する体制を整備する。


圃場整備事業の実施手続きを短期化する

 圃場整備事業を実施する上で、農家との信頼関係に基づく連携を基礎として法的手続き等の短期処理を行い、問題が生じたときには計画変更で処理することとした。これによって、事業立ち上げ手続きは通常なら最低3年は掛かるところを1年で終えた。迅速化したのは①担い手の選定及び、②換地計画における非農用地の設定である。また、同意を取り付ける傍らで計画図・換地設計書の作成を進めた。
発災直後の農家意識は不安定なため、担い手選定や非農用地換地を厳密に確定しようとすれば通常より長い時間が必要となる。そこで、基本的な換地に対する同意を押さえた上で、担い手、非農用地換地の変更があり得ることへの了解を取り付けた上で、事業実施に繋げた。


入札不調の原因

 入札不調の原因は、予算の実勢との乖離、手間のかかるもの・利幅の小さいものの敬遠である。
①価格の上昇は、人手不足による鉄筋工・型枠工の価格上昇の、材料等の物価上昇、県外業者の宿泊代負担等によって生じる。業者は、当初の見積もり額では受けることができない。
②現場は小さなものでも管理者を置くことが義務付けられるため、100万~200万円程度の小さな現場は敬遠される。このため、発注単位の大型化が必要となった。
③利幅が小さい、あるいは手間のかかるものは敬遠される。施工規模の小さいため池復旧(水替えは手間がかかる)、軟弱地盤のほ場整備、ほ場整備の補完工事は敬遠される傾向。


入札不調の対策

①価格を実勢に近付け、入札しやすいような経済的インセンティブを制度内で付与する。
②地区の切り分け方の工夫で、諸経費を増やすことができるようにする。
③仮設関連の費用を適切に積み上げ予算に組み入れる。

 不落が続くと業者の圃場整備経験実績の条件も徐々に緩めざるを得ない。地元から遠く離れた業者が落札することもある。これが、技術の品質管理の最大の障害となる。これに対して、県は指導回数を増やしたり、地元経験者をアドバイザーに迎えるよう助言したりする。

 また、NN事業関連業者には管内を超えた業務を受けない傾向が見られる。近隣管内業者を対象に被災地視察ツアーを企画・実施すると、入札参加・技術支援の動機付けになる。


工事発注には本人の同意取得に時間がかかる

 査定の終えたところから順に工事発注できれば復旧の速度を上げることができるが発注には予想以上に手間が掛かった。査定は地元の本人確認をせずに進めたが、工事発注においては本人の同意が不可欠である。被災者は避難しているため、所在の確認に手間。時間がかかる。
工区毎に地元説明を実施したが、集会の通知をしても来ない人があり、戸別訪問で対応する必要がある。


工事の発注単位を大きくするメリット

①金額が大きい方が入札では業者にとって魅力的。

②現場管理者(主任技術者)の不足で着工できない状況を緩和することができる。

③複数年で工事量をならして実施することができる。

④発注済みの面積が拡大し、早期復旧への社会的要請に応えることができる。


工事の発注単位を大きくするデメリット

①事業費が大きくなると議会案件となり、時間・手間が掛かる。
②業者は部門毎に入るため、業者間で下請けの奪い合いとなって、仕事が進まない他、事業単価の高騰に繋がる。

③発注単位を大きくすると工事の長期化し、未完地区が多く発生する。農家は何もできずに事業の完了を何年も待たされ、不満が昂じる。
④一部でのトラブルの影響が大きくなる。ある区画整理ができた地区の一部で強酸性土壌が見つかった。担当者は強酸性土壌の不作部分は共済で対応し、その他では作付けすることを提案したが、地元の合意を得ることができず、地区全体で作付けも見送られた。


地元農家から圃場整備の「補助監督員」を設置する

 圃場整備にあたり地元説明会を行うが、避難等により参加できない農家もある。そこで、地元農家の中に「補助監督員」を置き、集落での会合での農家への工事情報の伝達、農家からの要望・クレームの吸い上げ等の連絡・調整を行った。補助監督員の人選は、水利組合または区長からの推薦を受けて市町に登録した。補助監督員は施工業者と定期的に話し合いの場を持ち、早期の問題解決に当たる。地元農家が開始から引き渡しまで見ることにより、発注者と業者のトラブルも減少する。


復旧工事における被災者への配慮の例

 復旧業務に追われていると、被災地にはかつて住民が住んでおり今も多くの人が思いを馳せている場所であることを忘れてしまう。休みなく復旧作業が行われる現場で、住民とのトラブルが発生した。犠牲者の月命日に、多くの被災者が現場を訪れて慰霊をしている脇をダンプトラックが高速で通過したことに、被災者の感情が昂ぶって運転手とトラブルになった。被災者からの苦情で事態を把握したが、仕事の進捗だけに目を向けていたことがトラブルの元であると気付き、被災者への配慮を現場監督や復旧業務に携わるものに求めた。


住民とのトラブルを防ぐダンプトラック運用の工夫

 工事用ダンプトラックに標識(ゼッケン)をつけ業務内容が一目で分かるようにした。標識には、「農地復旧用土運搬」等と書き車両の前面に着けた。色も部局間で変え、識別が簡単にできるようにした(NN部局は緑)。住民は市役所に連絡すれば情報は関係部局に伝えられた。
 川沿いの道路はダンプトラックで混雑し、住民からの苦情が相次いだため、混雑緩和のため、工事関係者の通行においては左岸側を下り、右岸側を上りの一方通行とした。
 また、表土の運搬においては、経験者を前後に配置して数台の車列を形成する船団方式とした。前後を経験者に挟むようにしたので、土地に不慣れなものでも道を間違うことがなく、違反も発生しにくいという効果を生んだ。


自己復旧した農地への対応

 本来なら災害復旧事業の対象となるような災害であっても、農家は作付けを早めるため自己復旧そた場合、原則的には国費による救済措置はないが、新潟中越地震(2004)では、「災害復興基金」が自己復旧を救済した。


小規模災害への対応

1件当たり被害額が40万円以下の小規模被害は災害復旧事業の対象とならないが、これらも一体的にとらえて対応を行う必要がある。その方法には、①災害復興基金による対応、②市町村、県の単独事業による対応がある。県単事業では市町・農協等の団体を事業主体とし、市町村単では個人を対象とするの分担がなされた。


付帯施設への対応

 災害復旧事業の枠組みでは、本体施設が破損していない場合に付帯施設の復旧は単独では認められていない。その場合、県・市町の単独事業として復旧工事を実施した。


機能復旧の事例

 災害復旧は原形復旧が原則だが、機能復旧の方がコストが安価であれば、形態の変更は認められる。川の両岸にあった排水ポンプ場を統合して一体化した事例では、費用面で大幅に有利となり、また管理負担の減少にもつながった。

(参考文献:渡辺・菅野、災害復旧における排水機場の統合事例について、NN学会平27年度東北支部)


復旧農地の雑草の管理

 被災農地では次第に雑草が繁茂するようになる。雑草が種子を落とした後では、除草剤等による防除を行っても地上に種子が残って農地復旧の際に地中に混入し、営農再開後に障害となる。そのため、災害復旧の過程に雑草管理を組込み、適期に防除を行う必要がある。地元農家による「復興組合」が除草作業を行った事例もある。